みかんのくにへひとりでいけるかな。

主様実家の愛媛県今治まで、行くことになった。それ自体は今まで何度も行っているのだけれど、今年は大チャレンジ。6歳を目前にした倅くんが岡山から今治まで一人で向かう。何でも日頃から過保護に可愛がり過ぎだということで、「可愛い子には旅をさせよ」との主様の言。
卒園したての5歳児には無理じゃないかと散々心配したあげく、おばあちゃんからのGOサインが出たので放り出すことにした。放り出す前に念入りに準備はしてやるのが、主様のやり方。キッズ携帯とひらがな表記の通過駅のプリントを持たせた。
新幹線で岡山まで主様が送っていくので、倅くんの課題としてはこうだ。
「特急しおかぜに乗り、今治駅で下車」。実際乗り込むまでは主様が付いており、駅のホームまでおばあちゃんが迎えに来てくれるので、「下車」が倅くんのミッションとなる。
乗車時間は約2時間、もし乗り過ごした場合、終点の松山まで行ってしまう。そして、このしおかぜの特徴として、「次はいまばり〜」とアナウンスがあってから戸口に向かったのでは遅いということ。前の駅壬生川で下車準備をしてデッキまで出るという行動になる。その辺りをしっかりと言い聞かせて、本番。
倅くんと主様を送り出し、こちらも出立の準備。21日の午後、戻ってきた主様と姫さんとオレンジフェリーに乗り、東予港に降り立つ予定だ。
昼前、岡山からとんぼ帰りで主様が帰ってきた。しばらくすると倅くんの携帯から電話が。
今治についたよーおばあちゃんと合流したよー」とのこと。一安心。良く頑張った。
心配したというほど心配はしていなかったのだが、倅くんの弱みは、時間の感覚が無いこと。携帯の時間は読めるようになった。通過駅と通過時間が書かれたプリントも持っている。が、携帯の時間を見ても今自分がどこの駅を通過したかは読み取れないわけだ。
もし、車内アナウンスを聞き逃し自分が今どのあたりを走っているか分からなくなったら、おしまいだ。

オレンジフェリーで追いかけて、翌22日、実家へ着くと、やたらと元気な倅くんが飛び出してきた。
帰ってから「降りる駅が分かった?」と聞くと、倅くんが見せてくれたのは主様の渡した通過駅の書かれたプリント。見ると、今治の一つ前の壬生川駅まで一本ずつ線で駅名が消されていた。車内アナウンスがある度にペンで線を引いていったらしい。
まいったなぁ。見事というしかない。これなら車内アナウンスを聞き逃しさえしなければ、どこを走っているか分かる訳だ。
マイペースすぎてついていけないと周りを困らせているばかりの倅くんだが、1人っきりだと自分でちゃんとやれるらしい。
何事もなかったから良かったものの、乗り過ごしていたらアフターケアが大変だっただろうなと、ぼんやりといつもと変わらず騒いでいる倅くんを見ているのだった。