クリオネの最期、天使の記録。

今年の冬から冷蔵庫で飼っていた、クリオネ。7月14日、最後の一匹、死亡と判断した。
「北海道産鮮魚」のラベルを貼られてスーパーで売られていたのを一瓶買ってきたのが、2月9日。約5ヶ月間の飼育となる。以前の日記(http://d.hatena.ne.jp/onoa/20120302)に引き続き、一番大きい個体のみとなってからの記録を公開する。

2/21 クリオネ中を瓶から取り除き、一個体一瓶になる。
   3日ほどの間隔で、人工海水で半分ほどの水換えを行う。
3/12 泳ぐ姿が見られなくなる。弱ってきていると判断し、水換えのち、エビを細かくしたものを少量投入。変化無し。のち取り除く。
3/13 卵殻膜(鶏卵の内側の膜)を細かく切ったものを与えてみる。泳ぐ姿が見られる。
4/19 水換え時、クリオネを排水に流しかけ、慌てて救出する。
5/2 弱っていたのが回復して泳いでいる。
5/3- 水換え後、2週間に一度くらい卵殻膜を与えてみる。
7/-  弱ってきて泳ぐ姿が見られなくなる。瓶を揺すっても反応が薄くなる。
7/14 クリオネ大きい個体、死亡と判断。

3月、冷蔵庫を開けて明るくするとパタパタと泳いでいた姿が見られなくなり何とか「餌」に類似するものを与えたいと思うようになった。完全な人工海水で飼育していた為、海水に微量に混じる有機物が一切無いので、何かしらとても小さなものを捕食する機会も無い。エビを補食した例もあるので、何か与えてみようとむきえびを細かく刻んだものをほんの少しクリオネの近くに撒いてみたが、変化は無かった。
次に、クリオネの餌である「ミジンウキマイマイ」。現在では入手はほぼ不可能だというが、「ミジンウキマイマイ」は貝である。クリオネも貝で、自分の貝殻部分を生成するのに必要なカルシウム分を貝を捕食することで補っているのではと思った。そこで、身近で家庭にあるカルシウムということで、鶏卵はどうだろう。殻は堅く、そのまま捕食しないだろうと思われたので、卵殻膜をハサミで0.5mmほどに切り、ストローの先に付け、クリオネの口先に持って行ってみた。すると、角で触って何かを確かめているようだった。捕食のバッカルコーンは見られなかったものの、クリオネが反応することは確認できた。その後泳ぐ姿が見られたのは、何かしらショックがあったからか、全く栄養分の無い水に有機物が入ることで変化があったからか、理由は分からない。
4月、水を換える際、誤ってクリオネごと排水してしまう。完全に私のミスで悔やんでも悔やみきれない。慌ててシンクからスプーンですくい、瓶に戻す。少なくともいくらかの傷はついたはずで、しばらく泳がなかった。水換えの間隔は換えず、10日ほどすると、泳ぐ姿が見られたので、ほっとした。この時ばかりは自分の手で最後の命を絶ったかと思い、気が気でなかった。
7月、今まで、瓶を軽く回した時や、水換え後少ししてから見ると泳いでいたのだが、その際にも泳ぐ姿が少なくなる。
7月12日、底に沈み、反応が無い。水を換えて様子を見る。
7月14日、体はさらに萎縮し、ゼリー状の部分が溶解しだしている。分離ではないが、この状態で死亡と判断した。

2月から5ヶ月経って、7月。「ミジンウキマイマイ」が手に入らないので、いわゆる餓死するまでの飼育と知って、惨いことだとは思ったけれど、連れてこられた北海道の海にはもう流氷は跡形も無く、きっと他の仲間はすでに全滅していることだろう。北海道の海よりは長生きさせてあげられたのではないかと思ったりする。
全く何も知らずに買ってきて、そこから調べて、試行錯誤してやってきたつもりだ。クリオネの補食に関してはまだまだ謎ばかりで、本当に他の餌で成功した例が無いのか、知りたい。捕食しなくとも、何らかの形で栄養を得ていることは考えられないか、知りたい。
買ってきて1ヶ月も経たずに2匹の個体を死なせてしまったのは、こちらの知識不足だった訳だが、5ヶ月間クリオネを育ててみて得た知識は、もし今度クリオネを飼育する機会があれば役立たせたいと思う。
この記録がクリオネを冷蔵庫で飼っている方々に、少しでも参考になれば幸いだ。